第101回 I thought I understood.(わかったつもりになる中学英語事情)
Hello! Granny Hirokoです!
もうすぐ中学へ上がるお子様をお持ちのお母さま必見!
今日は、昨今の公立中学・公立高校での英語の授業についてお話します。
数年前に、教科書改訂がされて、どの教科も内容が刷新されました。
特に顕著な大幅改定があったのが、英語です。
私は、このコロナ前から中学生の生徒がいなくなり、主に大学受験生と関わって
きていたので、学校教科書の予習のような指導から遠ざかっていました。
で、この度、オンラインを立ち上げて、
再び現役中学生高校生の生徒さんとの関わりが復活。
で、わかったこと。驚いたこと。見えてきたこと、について。
「Communicative English」に特化した英語教科書を目指しているな、
というのは、オンラインの生徒さんのお一人目を教えてすぐに教科書内容を確認し
てわかりました。
えっ?これが中学一年生の、それもLesson1なの?
いきなり、これかよ?難しいやん!
というのが第一印象でした。
以前の教科書は、最初はまずBe動詞を入れて、
慣れてきたら、一般動詞が入ってきて
Be動詞と一般動詞を混同しなくなったころに、
現在進行形が入り(そこでちょっと混乱する中1) 助動詞が導入されて、
一年生の終わりに、ようやく過去時制が少しだけ登場。
数年前まではこの流れの教科書がどの出版社もほぼそうでした。
もちろん私が中学生だった半世紀前とは違って
改定前の教科書でも、「中学生の日常生活に沿った自然な会話の流れ」
が意識されていましたが。
今の教科書は、ページ数も増えて、内容も濃い。
最初から、Be動詞、一般動詞、そして時制も現在、現在進行形、過去、過去進行形
そしてcan や mustのような助動詞、これが混然一体として出てきます。
そりゃそうだ、自然なCommunicative English の指導を目指すなら、
現在形ばっかし、過去形ばっかしで会話が展開されることなんてないですからね。
それはよーくわかるの!よーく、わかるよ。
ただね、授業時間数は、以前と変わらないんだよ。
ここが問題ね!
現場の中学、高校の先生方のご苦労がすぐ頭に浮かびました。
どうやって、この内容を丁寧に教えられる?
そして、私の元に集まってこられた生徒さん達がみんな口をそろえて言ったこと
「学校の授業では、『わかった』つもりになるんですが、実際テストしたら点数が取れません。」
昔の生徒は違いました。学校の授業がわからないから塾へ来る。
わかっている子が悩んでる?
なぜ?
先日、オンライン開始前に、リアルでお目にかかれた生徒さんから
学校で使っているというプリントを見せていただいて、
腑に落ちました。
確か高校生達もこういうプリント持ってたな、と。
数年前から、導入されていた指導方法ですが、
予備校の先生なんかが広められた スラッシュ(/)リーディング。
前からどんどん訳していく、同時通訳みたいにね
で、最後にまとめて日本語としてわかりやすくこなれた意訳をさせる。
限られた時間内で、長文をいかに効果的に、読み直し(Back Reading)を
せずに読み進めていくかが受験では大きなカギになりますからね。
それは全然かまわないのだけれど。とても有効的な指導方法だけれど。
彼のプリントを見てびっくり!
初めから、「和訳」の答えが8割ぐらい書いてあるプリントを渡されている。
これでは、読解力は身につく訳がない!
数年前に見た高校生達のプリントには、和訳はありませんでしたからね。
そうか、授業数が少ない中で、文科省から指示されたカリキュラムをこなすには
昔みたいに、じっくりと時間をかけて生徒に答えさせながら、構文やイディオム等
のポイントを押さえて解説なんかしていたら、この教科書は終わるわけがない!
ってことで、「とりあえずカリキュラムをこなすための苦肉の策」として
こんなプリントを配っているのね。
和訳を読みながら「なんとなく英語をわかった気になる!」
でも、それは君が頭で考えて悩んで出した和訳じゃないからね。
そうか、だから「授業でわかった気がする」ってみんな言ったのか!
合点がいきました。
そして、長年おつきあいいただいている教材出版会社の営業さんと
教材発注時に電話でお話をして
「もう、学校の先生方は大変だと思いますよ。コロナで授業数確保できなくてさら
にね。実は今、『英語塾』は好調なんです。
英語の点数だけが悪い子が増えてるんです。
それは、Grannyのご指摘通り、この指導方法が大きいと
長年塾を経営されている先生方はみんな口を揃えておっしゃいます。」と。
やっぱりなー、嫌な予感は的中でしたわ。
日本人は、文法はできても、何年経っても最高学府を卒業しても
英会話ができない!
だったら、中学生から、コミュニケーションに特化した英語だ!って
上~の方の、えらーい先生達が頭付き合わせてお考えになって
こんな立派な教科書が生まれたんだろうな。
教科書は、本当に楽しい内容だし、挿絵も魅力的です。
でも、現場からの悲鳴が聞こえてくる。
40人近い生徒を相手に、この内容を理解させるなんて、神業です。
授業数、なんとかしないとね。でないと、、、、、、
「英文法すらできない日本人」を増やすだけだよ。
「事件は現場で起きてるんだ!」ってセリフがありましたが。
まさしく、現場は大変です。
マンツーマンで、丁寧に時間をかけて解説をして、ようやっと。
私が救える人数なんてしれているから。
これから、中学へ上がる前の小学生をお持ちのお母さま方、覚悟して
お子様にどうぞ早くから英語学習を始めさせてあげてください。
「小学校で習った単語」なんて書かれた、恐ろしい数の「既習単語」が
中学教科書の中で、あなたのお子様を待ち受けています。
小学校英語なんて、ALTの先生と楽しくカード取りしたり、
簡単な会話やゲーム楽しんでるだけなのにね。
日本人としてのアイデンティティーをきちんと確立させつつ
多言語を習得させていく。
それはものすごく大変なことではありますが。
少子化一直線の日本だからこそ
少数精鋭を育てられるのだと、この危機的状況をポジティブに捉えて
指導要領をも一度考え直してくださる
そんな、えらい先生様が出てきてくださいますようにと、祈るしかありません。
私は、これからも私の元に来てくださった生徒さんを責任を持って指導するのみ。
I thought I understood.
「わかったつもり」ではなくて
I got it! って生徒が元気に言ってくれるような
ちゃんと腑に落ちる指導をこれからも続けます。